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コンピュータの歴史


歴史を振り返ると、研究がコンピュータの進化に強く関わっている事がわかる。ソーシャルサイトなどの流行はドッグイヤーで流れていくが、研究の影響を受けた基礎部分は変わらず存在する。Linuxのコマンド体系はUNIXの時代から大きく変わっていない。昔大学の研究者が使っていたコマンドにより、スーパーコンピュータも組み込み機器もメインフレームもWWWサーバも制御できる。

地味で難解な分野がコンピュータの底流にある事を理解すると、華々しく表面的なIT業界というものが全く別の姿で見えてくる。地味で難解な部分が最も高度なのだ。海外では華やかな先端技術の前に地味な基礎研究が延々と続いている。残念ながら日本では底流部分は伝わりにくい。

最先端の分野も地道な開発の延長にある。クラウドはネットの延長にあり、ビッグデータは検索エンジンやデータマイニングの延長にある。Hadoopの本を読むと検索エンジンの研究開発から始まってるのがわかる。日本人技術者には最先端分野だけに反応する人も多いが、それだけでは前に進まない。真の最先端は研究論文などの内容である。欧米企業がIT業界の最先端にいるのは、他の業種と同じく継続的な研究開発の成果である事を理解すべきだ。それにより初めて真の最先端IT技術に近づく事ができる。

原点としての研究


全ての始まりはアラン・チューリングが発案したチューリングマシンにある。具体的なコンピュータの姿は何もないが、情報処理の理論的な出発点になっている。

重要なのはチューリングマシンが数学的かつ人工知能的である事だ。コンピュータを日常的に扱っていると気づきにくいが、本質的に数学的で人工知能的であるという事は、基礎的な部分を理解する上で非常に重要になる。

この仮想機械を実体化したのがフォン・ノイマンである。現在のコンピュータ、すなわちノイマン型コンピュータの設計と実装の中心人物であり、コンピュータの父と言われる。チューリングと同じく数学者であり、数値計算、シミュレーション、人工知能、ゲーム理論などの研究を行った。

現在これらの分野の多くは研究機関のみで行われているが、コンピュータの基礎を突き詰めていくと、これらの影響が色濃く現れて来る。コンピュータの原点はこれらの研究であり、Webや電子文書が現れるのはもっと先の事だ。最近になり人工知能が一般化しつつあるが、コンピュータの使い方から見れば原点に帰っているとも言える。

IBMの時代


IBMは現在でもIT業界の巨人だが、当初は巨人というレベルでなく支配者だった。今のGoogleや少し前のMicrosoftより大きな影響力を持っていた。

IBMの台頭以前、コンピュータの適用分野は研究開発だった。IBMはInternational Business Machineの略であり、文字通りビジネスの世界にコンピュータを導入した先駆者である。業務用大型コンピュータであるメインフレームを大企業に売り莫大な利益を上げた。この頃からコンピュータは研究開発以外の目的で使われるようになる。

ソフトウェアの分野ではFORTRANやCOBOLが生まれ生産性が向上し始めた。この時代にはまだソフトウェアはハードウェアの付属品レベルでしかなく、利益を上げられるような代物ではなかった。IBMの主力製品もメインフレームというハードウェアだった。各社とも自社のハードウェアを売って顧客を囲い込む事に心血を注ぎ、今のように互換性や相互接続性が重要視される事はなかった。

Microsoftの時代


次にIT業界に君臨したのはMicrosoftである。Microsoftの登場は皮肉にもIBMによってもたらされた。IBMのパーソナルコンピュータであるIBM PCのOS開発を引き受けたのがビル・ゲイツとMicrosoftだった。ソフトウェアはハードウェアの付属品扱いだったため、深刻な影響をもたらすとは思わなかったのだろう。

だが時代は容赦なく変わっていく。ダウンサイジングの波により、コンピュータの中心はメインフレームからパーソナルコンピュータとUNIXサーバに移っていく。UNIXは研究で重用されていたOSであり、Microsoftが作ったMS-DOSにも影響を与えている。このように研究はコンピュータの底流としてずっと影響を与え続けていく事になる。

ダウンサイジングにより分散処理と相互接続性が重要になると、今までのような囲い込み販売は成立しなくなる。IBMも苦労したが、もっと苦労したのは追従者たちだ。多くの企業が消滅したり撤退を余儀なくされた。ドッグイヤーと称されるIT業界の激しい栄枯盛衰はこの頃より始まったものだ。

ソフトウェア言語ではUNIXと共にC言語が時代の中心になって行く。この唯一の汎用言語はC++に拡張され今もソフトウェアの中心に存在している。

またMicrosoftがソフトウェア専業である事に象徴される通り、この頃よりソフトウェアがハードウェアと並ぶ主力製品として認識され、それを連動させる事が最重要課題となっていく。

Googleの時代


初期のインターネットはUNIXと共に研究で使われていた。リモート操作、ファイル転送、Eメール、ネットニュースがその中心だった。時代が動いたのは欧州原子核研究機構でWWWが作られた時だ。研究情報の共有のために生まれたWWWはパソコンの普及と共に一般化され、現在のような巨大メディアに成長していく。その一方で昔からあったネットニュースや閉鎖的なパソコン通信は廃れてしまった。

WWWが巨大化する中で検索サイトとしてGoogleが登場した。ラリー・ペイジが考案したページランクはリンク構造の評価を自動的に行う数学的な手法である。人力で検索サイトを作っていたYahooを打倒し、WWWの進化に応じて検索アルゴリズムを変えながら今もIT業界に君臨している。

携帯電話やタブレットの普及で分散化はより進行し、各製品の連動はより決定的な意味を持つようになった。連動性を保つために各社はAPIを提供し、クラウドによりデータセンターからタブレットまでがシームレスに動作する時代になった。

OSではUNIXから派生したLinuxが驚異的な発展を遂げ、スーパーコンピュータから組み込み機器までを支配するようになった。一般的な利用者からみるとパソコンやタブレットなどのOSであるWindowsやiOSなどのイメージが強いだろうが、それ以外のコンピュータは全部Linuxと言うような状況である。

ソフトウェア言語ではWWWと共にJavaが発展し、C/C++と並ぶまでになった。ただ使いやすさの点でC/C++に勝るが、汎用性では及ばない状況である。またPythonがデータ科学や人工知能と共に隆盛しつつある。

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